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尺八の取扱い

初めて尺八を持つ人のための,取扱い上の注意です.

  • 中継ぎの抜き方
  • 中継ぎで二つに分かれる尺八は,現在は一般的です.

    ところが,なかなかこの中継ぎが抜けないことがあります. その時,力任せに引っ張ることはやめて下さい. 下管を持って,上管をトントンと叩くと,中継ぎのところに隙間が出来てきます. 少し隙間ができれば,簡単に外れます.

  • 中継ぎのジョイントグリス
  • 中継ぎがあまりにも堅い時は,ジョイントグリスを塗ります. この時,前に塗って残っているものは奇麗に拭き取りましょう. その後,新しくジョイントグリスを塗ります. ジョイントグリスはほんの少しで充分です. あまりベタベタ塗る必要はありません.

    ジョイントグリスは,和楽器の店には,たぶん尺八用のジョイントグリスがあると思います. 洋楽器の店なら,リコーダー用のジョイントグリスで大丈夫です. かつて,尺八には「一番安物の整髪用のポマード」が最適だ,と教えられました. しかし,この臭いがなかなか問題で,私はポマードを使うのはやめました.

    ジョイントグリスは,中継ぎが緩くなってしまった時にも役立ちます. しかし,緩くなった中継ぎは,ちょっと漆を塗るだけで直りますから,さっさと修理に出しましょう.

  • 露切り
  • 尺八を吹いていると,管内に水滴が溜まってきます. 寒い時に長く吹いていると,これがポタポタと管尻から落ちてきたりします. 知らない人がこれを見ると,涎と勘違いして,汚がられます. でもこれは涎ではなく,窓ガラスに息を吹きかけて出来る水滴と同じものなんですけど.

    吹き終わったら,この露は拭き取っておきましょう. 竹は乾燥すると割れることがあります. だからこの露を拭き取らない方が良いのだ,という意見を聞いたことがありますが,割れるのは竹の外側で,露が付いているのは内側ですから,あまり意味がないように思います. 割れるのがいやだったら,保管方法に気をつけましょう.

    露には,ほんの僅かでしょうが,唾液も混ざっているかも知れません. それをいつもそのままにしていると,しかもビニール袋に入れてしまっておいたりすると,やがて悪臭を発することになる恐れもあります.

    管内の露を拭うために「露切り」というものがあります. 和楽器店で売っていますが,ガーゼや木綿の柔らかいハンカチの一か所に紐を付けて,紐の先端に錘を付けるだけですから,自分で作れます. 錘は,管壁を傷つけないようなものを選びましょう (私の祖父は,若死にした最初の妻(祖母)の残した帯どめを露切りの錘にしていたのだとか :p ).

    歌口から管尻まで,ゆっくり露切りを通します. 急いで通しても,露は拭いきれません. 露切りは中継ぎを抜く前にやったほうが効率的ですね.

    露を拭う時には,歌口の周りも拭っておきましょう. 歌口の周りには,どうしても唾液が付きます. それをそのままにしておくのは衛生的とは言えません. ついているのはほんの僅かです. でもそれがだんだん貯まってきて,ある日突然それに気がつくと,かなり嫌な気分です. なお,歌口のエッジを傷つけないように,注意してください.

  • 尺八の保管
  • 竹の尺八は,乾燥,湿度の変化,温度変化などに弱く,割れてしまうことがあります. それを防ぐために,使わない時は,タンスの抽斗にしまうとか,ビニール袋に入れるというてっとり早い方法もあります. ビニール袋は,雨の日に出かけると,ビルの入口で手に入ります. そして,冷暖房の近く,直射日光,などを避けて保管します.
    参考:尺八が割れた!

    尺八の歌口は,必ずキャップなどで保護してください. エッジは尺八の命です. 修理をすることはできますが,修理しなければ使い物にならなくなってしまいます.

2011年08月