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ちょうどいいピッチになる吹き方は

尺八は同じ指遣いをしていても,吹き方でピッチ(音高)が変わります. それは昔のフルートも同じ事で,ピッチが不安定であることを理由に,フルートの曲を書きたがらなかった作曲家もいたそうです(モーツァルトだったかベートーヴェンだったか......).

顎に当てる尺八の位置,吹き口に被せる上唇の様子,吹き込む息の強さ,などなどでピッチは変わってしまいますが,もっとも大きな影響のあるのは,顎と尺八の角度です. これを逆に利用してピッチを変えることは,「メリ」(あるいは「顎メリ」)とか「カリ」という,尺八にとっては特に重要なテクニックです. しかし,それでは,メリでもカリでもない,ちょうどよいピッチ(音高)を得るには,どんなかげんで吹けばいいのでしょうか.

各々の指遣い毎に,ピッチチューナという機械を用いてチェックをすることもできます. でも,そんな,機械にばかり頼る方法は,どうも尺八に似合わないような気もしますね. 私は,次のようにしています.

全部の指孔を開けた音(実際には1・2孔は塞ぎます)である,琴古流のイ(都山流のヒ)の乙音と,全部の指孔を塞いだロ(琴古流・都山流とも)の甲音(オクターブ高い音)が,同じピッチになるような吹き方を探します. この時の吹き方が,その尺八にとって最も良いピッチバランスの吹き方なっているはずです. そこで私は,この二つの音を連続して,「イロー,ロイー」というように何度も何度も繰り返し,どちらもピッチとしては「ロロー,イイー」と聞こえるような構え方を探します.

ただし,本曲では,絶対的なピッチはそんなに問題にはなりません. 旋律中での前後関係の方がずっと重要です. 従って,実際には,いつも一律なピッチではなく,旋律が要求するピッチを自由自在に得られるように修練する必要があります.

2008年04月