顎でめった音から,指の違うめらない音(かった音)に移行する場合,ちょっと注意が必要です. 例えば「ツメ→レ」とか「ウメ→リ」のような場合です. メリのない「ウ→リ」の場合も,「ウ」は指だけでは高すぎて,顎も少しめらねばなりませんから,同じことです. そのようなめった音からめらない音に移行する時は,指とともに顎のメリも戻します. ところが,この指と顎の二つの動作,なかなか同時に行なうのは大変です. 指の移行は容易で,ほぼ瞬時に移れます. 指によるピッチの変化は,指孔を開き始めた瞬間,あるいは指孔を塞ぎきった瞬間におこります. ですから,一瞬です. しかし,顎の方はそうはいきません. 顎によるピッチの変化(メリ/カリ)は,顎の動きに応じた連続的なものですから,瞬時にはピッチを変えられません. この二つの動作を同時に始めると,ポルタメント(ピッチが連続的に変ること)が掛かったように聞こえてしまいます. これは,そういう効果を求める場合は別として,決して気持ちの良い演奏にはなりません. 少なくとも本曲の場合は,よろしくありません. そこで,こういう場合は,まず顎を動かします. それから追いかけて指を動かす. こうすると,次の音を出す時はすでに顎をかっているわけですから,指を変えた途端に求めるピッチが発音され,もしもポルタメントが掛かるとしても前の(消えていく)音にだけ掛かるわけですから,さほど障りにはなりません. カリ音からメリ音に移行する時も同じことで,やはり顎を先に動かして,指は後から追いかけることになります. 2008年03月
|